2人めの少女

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2人めの少女

 『昔々……あるところに……人間の少女がいました』で始まる物語が大好きな少女がここにも1人。  アリッサは13歳の女の子。魔法使いの家系に産まれ、人間がおとぎ話に出てくる世界に生きている。 「アリッサ〜! 朝よ!」  母親の甲高い声がアリッサを呼ぶ声で朝が始まる。 「……んん~。もう少し……寝かせて……」  アリッサは更に布団に潜り込む。鳥のさえずりが響き渡り、のどかな空気がただよう気持ちの良い朝だ。 「アリッサ!」  母親はアリッサの部屋まで入って来た。 「アリッサ、遅刻するわよ!」 ――遅刻? え? 今なんて? 「遅刻?!」  アリッサは遅刻と言う言葉に驚き、飛び起きる。さっきまでの眠気はどこへやら、寝起きとは思えない速さで着替えた。 「ママ、もうちょっと早く起こしてよ! 朝弱いんだから……」 「……何度も呼んだわよ」  母親は呆れた表情で答える。   大急ぎで顔を洗い「パパは?」と母親に聞く。 「もう、出かけたわよ」 「そう。ごめん、朝ごはんいらないや。行ってきます!」 「行ってらっしゃい」  母親は慌ただしく箒に乗り飛んでいく娘を見送った。  
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