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「おっはよー! アリッサ!」
「あ、フレッド。おはよ」
後ろから声をかけながら飛んできたのは、幼なじみのフレッドだ。フレッドはアリッサの2つ年上で魔法界の高校に通っている。アリッサは中学生だ。
「アリッサ? もしかしてまた寝坊?」
「もう、またって言わないでよ〜」
「いや、だってすっげー慌てて飛んでるの見えたからさ、それに……」
フレッドは言葉を止め、アリッサをじっと見つめる。
「なっ、何?」
「前髪に寝癖ついてる」
「え? やだ!」
慌てて髪を押さえるとフレッドは笑っている。
「冗談だよ。飛んでるんだから寝癖なんてわからないって」
「う……」
フレッドは明るい茶色の髪をなびかせ、からかうような金色の瞳で笑っている。
「アリッサはまだ子供だからな〜」
「フレッド!」
フレッドを軽く叩こうと手を振るものの、軽々と避けられてしまう。
「そう怒るなって」
「怒るよ!」
「アリッサ……」
「何よ……」
「ごめんっ」
「フレッド?」
「帰りにアリッサの好きな食べ物おごるからさ」
フレッドは様子を伺うようにアリッサを見つめる。
「……焼き芋」
「ん?」
「美味しい焼き芋が食べたい……」
「分かった! アリッサの学校終わってから待ち合わせよう」
「うん!」
フレッドは安心したように笑っていた。
アリッサの学校が終わり、フレッドと待ち合わせ、焼き芋の屋台へ行った。魔法界とはいえ、食べ物は人間界と同じだ。ただ、魔法界ではその事実を知る者は少ない。
「はい、アリッサ」
フレッドはアリッサの分を買ってきてくれる。
「ありがとう!」
アリッサははじけるような笑顔でフレッドにお礼を言う。クスッとフレッドは微笑んでいる。
「どういたしまして」
熱々の焼き芋から湯気が昇り甘そうな匂いがただよう。さっそくアリッサは焼き芋に息を吹きかけ冷ましながら、頬張る。
「ん~! 美味しい!」
焼き芋はとても甘くてなめらかな舌触りを感じる。
「え?」
フレッドは突然一方向を見て固まる。
「どうしたの?」
アリッサはフレッドの視線の方に顔を向けると、立ちすくんでいる少女がいた。
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