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パパ
「パパに会ってもらえますか?」
「ちょっと、アリちゃん?」
「ごめんなさい! お姉ちゃんのお父さんもいるのに」
「まぁ、俺は構わないよ」
「え?」
「だってさ。2人共嫌いで離れた訳じゃない。今は家庭があっても、気持ちに整理つけるためにも会ってみるのもありじゃないかな?」
「私は……会いたくない。わざわざ会わなくて良いわ。偶然会うならまだしも、会いに行くことはないと思うの。お互い家庭があって幸せなのに……」
「亜紀はまだ彼に想いがあるのか?」
「え?」
「会いたくないのはまだ想いが残っているからじゃないのか?」
「……違うわ。会いたくないのは、気持ちが揺らぎそうで怖いのよ」
「正直、会って気持ちがぶり返したら、俺だって嫌だよ。けど、会ってみなきゃ分からないし。過去に縛られたままは苦しいと思ってさ」
「パパはお姉ちゃんに出会って嬉しそうでした」
「アリちゃん?」
「でも、時々辛そうだった……パパが会いたがっているかは分からないけど……」
「そうね。話くらいしてみても良いかもしれないわね」
「お母さん……」
「大丈夫よ、真帆。別に何かが変わるわけじゃない。過去としっかり別れるためよ」
外から騒がしい声が聞こえてくる。ドアを叩く音がして、真帆が開けてみると参拝客の男性が立っていた。
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