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狐の嫁入り
アリッサが帰って少しして年が明けた頃。真帆は誕生日を迎え16歳になった。
今日は妖の国の国王と王妃、ヒスイが来ている。そして、真帆と真帆の両親がそろっている。2人が結婚することになり、両家の顔合わせが真帆の家で行われた。
「国王様に王妃様……」
まるでひれ伏すように両親が頭を床に付ける。
「そんなに堅苦しくしないでくれ。これから家族になるのだからな」
低く穏やかな声が和室に響く。
「はい」
「真帆さん」
「はい!」
「妖の国は皆真帆さんのことを歓迎しています。ヒスイのことをよろしくお願いします」
「お義父様……これから妖の国や王妃のことを色々学ばせてもらいますので、こちらこそよろしくお願いします」
「王妃になる勉強はそれ程難しくはないはず。それよりも、国民を思う気持ちやヒスイと支え合って行く覚悟があれば何とかなりますよ」
王妃は柔らかな美しい笑みを浮かべて答える。
「ありがとうございます」
そうして顔合わせは和やかに進み、いよいよ嫁入りの日が訪れた。
✧ ✧ ✧
真帆は今、全身を映した鏡の前に立っている。母に白無垢の着付けをしてもらっていた。
「とても綺麗ね……」
母は真帆に呟く。
「こんなに早くお嫁さんに行ってしまうなんて……少し前まで子供だと思っていたのに」
「お母さん……」
真帆は込み上げてくる涙をこらえた。せっかくのお化粧が落ちてしまう。
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