文化祭二日目

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文化祭二日目

 翌日はもっと人が体育館に集まっていた。保護者もいるけど、生徒数がすげぇ。昨日見ていた他クラスの先生が職員室で声をかけたらしく、後ろの立ち見席に教師陣がズラッと並んでいた。  公演が始まると、昨日よりもっと笑い声が上がった。遠慮なく。  二回目の本日は棺にスムーズに入れた。伊織がドレスのスカートを寄せてくれていたから。棺の箱は、井上さんが段ボール紙部分を刺そうとして薄い紙の部分に刺し直すハプニングがあったけど、それ以外は順調に進めることが出来た。伊織の付け髪が昨日よりガチガチに固められていたから、棺の箱の中から立ち上がる時、普通に伊織を引き起こした。客席からは「もっと!」と声がかかってしまったけど。  公演が終わった後、昨日と同じようにジュリエットの髪に手をあてて正面を向かせれば良かったんだよと、舞台袖に控えていたクラスメイトに教えてもらった。アクシデントを防ぐアドリブだったから、「キャー」のポイントがわからなかったんだ。  二日目の公演は、拍手喝采で終わった。  余韻に浸るまもなく次のクラスの演目のために急いで撤収。正直、衣装のまま次の公演を見学してみたいという気持ちもなくはなかった。でも、体育館の壁横を通る際めちゃくちゃ話し掛けられたから、周囲に迷惑をかけないためにも早足で教室に帰ることにした。  全員の着替えが終わったあと、教室を元通りに戻す。  校内放送で文化祭終了の音楽が流れると、保護者や他校の知り合いが帰っていった。  改めて体育館の準備室にしまった手品の装置を引っ張り出して、梱包材でグルグルに巻いた。郵送用の書類は既に用意してあるけど、発送は明日、先生の立ち合いの下で行われる予定だ。朱里と浜田先生が対応する。背景の絵の幕と舞台衣装は好評だったので、演劇部に寄付することになった。一部の女子は記念として家に持って帰ると言っていたけど。  簡単なホームルームのあと、解散となった。 「終わったな~」 「お疲れ~」  帰る途中、俺は伊織に声かけした。ネイルは除光液できっちり落としたらしく、伊織の爪は白っぽくなっていた。  怒濤の二日間が濃すぎて、俺は日常に戻った実感がわかないまま、帰宅した。
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