帰らないと

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 無数の腕によって押し倒され、俯せに組み敷かれた身体。逃げようともがくけど、腕の力が強く身動きすら取れない。  影たちの視線は俺の臀部に集中している。熱がこもった吐息混じりの笑い声の幻聴に顔を歪ませたところに、下からするりと臀部を撫で上げられる現実の感覚が伝わる。そして、俺の腰を何者かの手が掴み、勢いよく持ち上げた。  突き上げられた臀部に手が添えられ、左右に力が込められる。臀部は抵抗なく開帳され、アナルが露わにされてしまった。そこに、ひときわ強い視線が注がれ、荒い呼吸が吹きかけられる。  誰かが顔を近づけている。  そう感じた直後、アナルにベロリと舌が這った。 「――ひぃっ」  嫌悪感のこもった声が思わず出てしまう。影たちにとっては、この反応も余興の一つになるのだろう。嬉々とした空気が伝わってた。  舌はねっとりと這い回り、閉じられた場所をこじ開けてくる。 「……んっ。……んんっ……」  舐める仕種から、それは舌だと感じていた。けど、中に入り込んできたそれは、舌では到底届かないであろう場所をつついてくる。指のようでもあるが、それは指とは思えない複雑な動きをしている。何より不可解なのが、それには体温というものが感じられないところだ。  得体の知れないものが、俺の中を浅く深く掻き乱してくる。  言葉では言い表せられない不快感に、吐き気が込み上げる。俺は込み上げてくるものと声を必死に抑え、この動きに耐えた。  どのくらい中を乱されたのだろう。ようやく舌らしきものが抜き取られ、いっときの安堵を得る。が、安堵も束の間。愛撫の余韻を残す俺のアナルに、太いものがあてられた。 「――ふっ! ……うあぁぁ…………」  それが陰茎だと認識する間もなく、身体の抵抗などものともしない勢いでそれは挿ってきた。
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