帰らないと

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 そんな想像が脳裏をよぎった瞬間、まるで俺の思考を覗いていたみたいに、影たちの高笑いの幻聴が耳の奥に響き渡った。  聞こえないはずなのに、圧を感じる暗く重い笑い声。この空気に気圧され、恐怖は完全に振り切れてしまった。 「――ひあっ! ……あぁ……はぅぅ……」  俺の意識では悲鳴をあげていた。けれども、俺の口から出てきたのは、影の抽挿によって押され出てくる短い吐息だけだった。  意識と肉体は恐怖で混乱し、息がまともにできない。必死に臭い空気を肺に取り込もうとするのに、どうやっても上手くできず、胸が苦しい。 「……あひっ……んあぁっ……――――あぁああっー!」  一人、呼吸困難に陥る俺の目の前で、拓馬さんが絶頂を迎えた。  先端から勢いよく吐き出される精液。パタパタと畳の上に落ちていくが、そこにはすで白い水溜まりが広がっていた。  この短時間で何度絶頂を迎えたのだろう。拓馬さんは苦痛と快楽が混在した表情で、ビクビクと全身を痙攣をさせている。そんな限界状態な拓馬さんの中で、影も達したのか、動きを止めて黒く太い陰茎を小刻みに震わせていた。  長い放出が終わり、影が陰茎を抜き取る。すると、ぽっかりと口を開けた拓馬さんのアナルから、タール状の液体が大量に流れ落ちた。  影はぐったりとした拓馬さんを抱えたまま、離そうとしない。  この影は、まだ拓馬さんを犯し続けるつもりなのか、未だに勢いを衰えさせず雄々しい姿を保っている陰茎を湛え、俺を見下ろし笑っている。  もう拓馬さんを苦しませないで……。  そう思った矢先、俺の中を蹂躙していた陰茎が突然抜き取られた。
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