帰らないと

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 果てるたび、入れ替わり立ち替わり俺を犯し続ける影たち。執拗に抽挿を繰りされ、中はズクズクとした快楽と痛み、それと液体で満たされた圧迫感が広がっていた。いったい何体の影が俺の中で果てたのだろう。そして、あと何体の影が俺の中で果てるのだろう……。  しかし、次の影はなかな来ない。それどころか、俺の周りを陣取っていた影たちが、俺を押さえ込む数体を残し、一斉に離れていった。  身体の自由は奪われたままだが、強い圧迫感と快楽を訴えていた場所は、その感覚が開放感へと変わっていた。そんな突然の解放に肉体が安堵したのか、困難になっていた呼吸が戻りはじめた。 「――――っ」  どうにか呼吸が整い、少しずつ恐怖以外の感情が戻りはじめた時、全身に電流のような衝撃が走った。  押さえ込んでくる影たちの仕業かと思ったが、そうではなかった。  衝撃の正体は、視線だった。  拓馬さんを抱える巨大な影が、笑みを消した赤黒い目で俺を射抜くように見ていたのだ。  まさか、次は俺が……? そんな不安がよぎる。 「……や……やだ。……やめろ……」  小さく頭を振り、抵抗の意思を見せる。  成人した男が泣きながら懇願する様は、さぞかし滑稽なのだろう。影たちは上機嫌そうに笑っている。それは、拓馬さんを抱える巨大な影も同様で、再び愉快そうに目を細め、黒色の中にくっきりと浮かぶ赤い三日月型の口から重く深い笑い声を発していた。そして、衰えを知らない陰茎をさらに太く反り勃たせていった。  影が突然立ち上がった。同時に、影の拘束から解き放たれた拓馬さんの身体が力無く畳の上に倒れ込む。  手が離れた今なら、拓馬さんを助けられるかもしれない。けれども、俺はそれをしなかった。……いや、できなかった。  俺は、全身で恐怖を感じ、震えていた。  いつの間にか俺の身体からも影の手が離れていたのに、それに気づかないほどに。  それほど恐怖していた。遥か頭上から見下ろしてくる影の姿に……。
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