【二週間】

5/22
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「若様!!何処におられたのですか?!」 「上様が生類憐みの令なるものを出して、大変な事態に陥っておりますぞ!!」 「何とかして下さい!!」 「特に犬を虐待したら獄刑になる者が、あとをたたず……このままでは……」 生類憐みの令? なんか聞いた事があるな? 私は、そんな事を思いながら犬と戯れている上様の前に鎮座した。 「よう、徳松。何処に行っておったのだ?余は心配で心配で……」 「……そんな風には見えませぬが?」 「あ、それ、その……徳松に会えない辛さから、このように寂しさを紛らわせていたのじゃ」 私は少し考え込んだ。 徳松に生類憐みの令…… この殿様は、もしかしたら徳川綱吉? そうだとしたら……おかしい事が一点だけある。 「父上!!犬の事を思うあまり、人々を極刑にしているというのは本当でありますか?」 「当然じゃ。余が特に愛してやまない犬に手を出す者は許さぬ!!!」 その言葉を聞いた私は、すかさず、綱吉公に戯れていた犬の首に手をかけ、ドスンと畳の上に叩きつけてやった。 綱吉公をはじめ、家臣達も、私がしでかした事に驚いている。 「父上、この私目も極刑でござるな?」 と私は言って自分の腰刀を抜き、思いっ切り自分の腹に刀を突きさそうとした。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!