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その日は10月にしては蒸し暑い日だった。
私はカーディガンを脱ごうか迷ったが、中は半袖のTシャツだったので、やめておいた。
街中を歩く人の中に半袖の人がいなくて恥ずかしかったのだ。
滉平は暑くないのかパーカーを羽織ったままだった。
二人で暫く歩くとファミリーレストランが見えてきた。
「英美里、あそこでいい?」
「うん」
とにかく私は照りつける太陽の下から逃れたかった。
ファミリーレストランに入ると店内がザワついた。
客層は私の、お母さんくらいの女性くらい……いや、もう少し若いくらいだろうか?
やがて滉平にサインを求めてくる女性客が、チラホラと滉平に近寄りだした。
「いつも応援、ありがとうございます。ですが今はプライベートなので……」
と滉平は丁寧にサインを断った。
「あの……その子は?」
ある女性客が私を指さし滉平に訊いてきた。
「妹です」
「まぁ、妹さんなの!あなたに似て美形よね!妹さんとのデートを邪魔して、ごめんなさいね?」
と言って、その女性客は自分の席に座った。
そうか。
滉平は○○Zライダーの主役だもんね。
私は、そんな滉平に妹と紹介されてドキドキとしていた。
「さ、俺達も席につこうぜ!」
と私に言いながら滉平はパーカーを脱いだ。
滉平も中は半袖だった。きっと私と同じ思いをしていたのだろう。
そう思うと、おかしくて私のドキドキも薄れ私もカーディガンを脱いだ。
それにしても……
今日のように暑い日はクーラーくらい入れてくれてもいいのに……と私が思った時だった。
「ちょっと、たんま!!!!」
と店内中に響き渡る声を滉平が出したのだ!!!!!!
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