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「あのぉ〜……英美里さん、まだ引き込もっていますか?」
杉本家の玄関から少しヤツれた女性が顔を覗かせながら、そう英美里の母親に訊ねた。
「柳田先生……それが……まだ、誰にも会いたくないと」
「そうですか……」
柳田先生という人物は英美里が通っている小学校のクラスの担任だ。
母親は肩を落として帰る柳田先生の後ろ姿に、心の中で、ごめんなさいと呟き、本棚からアルバムに挟んであった、一枚の古い新聞記事を取り出した。
そこには『今一番人気の子役!!』
という見出しの下に可愛らしい女の子の写真が掲載されていた。
「英美里ったら……子役がどれだけ大変なのか知らないから……」
それでも、あれから一週間経っていた。
「いくら頑固な英美里でも、あの野田監督の手にかかれば今日辺りにでも帰ってきそうね?」
母親はクスッと笑い、今日は英美里の好きなカレーライスにでもしようかしら?と思いながら、アルバムに新聞記事をしまった。
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