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「こちら、ダンジョン入場許可書になります。では、お気をつけて」
にこやかな笑みを浮かべて、俺は三人組の冒険者をダンジョンに送りだす。三人組は和気あいあいと会話をしつつ、ギルドを出て行った。……あんな風に和気あいあいと出来るのは、いつまでだろうな。
(って、余計なお世話もいいところだよな。……俺、冒険者じゃないし)
もしも、俺が冒険者だったら。多分、あいつらも俺の忠告をある程度は聞いてくれるのだろう。が、生憎俺はギルドの受付。そんな奴の忠告なんて、聞いてはくれない。ただ、必要とあれば教えるだけだ。
「まぁ、今回のダンジョンは初心者向けだし、素人にもぴったりだし……」
出てくるモンスターも低級のものばかりで、そう簡単にはやられないだろう。……そう、信じておこう。
どうしてこんな風に心配するのか。それは、単に送りだした冒険者が死んだら気分が悪いから。……今まで、何度かそういうことがあった。そのたびに、どうしてもっときちんと忠告しなかったのか……と、俺は一人で後悔してしまうのだ。
……我ながら、人がいいというべきか。
(先輩たちは、気にするなっていうけれどさ……)
でも、人が死んでいるんだ。……そう簡単に、割り切れるようなもんじゃない。
そう思いつつ頬をポリポリと掻いていれば後ろからポンっと肩に手を置かれた。
「やぁやぁ、フリント君。相変わらず仕事に精を出しているね」
「……いや、普通じゃないですか」
そんな言葉を呟いてそちらに視線を向ければ、そこにはイケメンがいた。金色のさらっとした短い髪と、優しそうに見える赤色の目。まるで王子様のような容姿を持つこの人は、俺の職場の先輩。名前をリアン・エイマーズ。年齢は俺よりも一つ上の二十三歳。
「正直、僕はフリント君にはこの仕事向いていないと思うんだけれど」
先輩が、近くから椅子を引きずってきて、俺の真後ろに座る。……うん、普通に邪魔だ。
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