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眠れない夜
いつからか、眠るのが難しくなった。小さい頃から、寝る前に本を読むことが好きだった。本を読んだまま眠りの世界に旅立てば、きっとその先に本と同じ世界が広がっていると思ったから。小さい頃はいくらも読まないうちにぐっすり眠ってしまって、起きた時には見ていた夢の内容なんて覚えていなかった。いつもそれが悔しくて、朝起きるとお母さんやお父さんに不満をぶつけたりなんかしていた。
あの頃はそれで平気だった。
目覚めれば幸せな朝が待っていたから。
今は、いくら本を読みすすめても眠りの世界に誘われることはなかった。頭が寝ることを拒んでいるみたいに、はっきりと覚醒してしまうのだ。そのうちに本を読み終わってしまって、枕元の読書灯を消すと、窓の向こうに広がるまだ明けない夜の空を見つめる。
寝静まった街。
いつもと同じ夜。
穏やかで、孤独な夜。
夜は、静かで心地いい。眠れなくなってから気がついたことだった。眠っていなくても、夢の中にいるような気持ちにさせてくれる。ああ、でも。もう一度小さい頃みたいな素敵な夢が見たい。ある日花びらの招待状が届くの。魔法を使えたって、お姫様が出てくる物語には憧れるものだ。私たちの世界の魔法は、本当の願いを叶えてくれることはないから。
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