vixen

1/7
前へ
/7ページ
次へ
高校2年。 17歳。 もうすぐ定期試験。 無意味な定期試験だ。 その後には無意味な冬期休暇をひかえた、12月の半ば。 寝室の窓を開ける。 冷たい風が吹き込む。 北側向きのこの窓は、干からびた古い用水路に面している。 3階のこの部屋から飛び出して、地面から10メートル掘り下げたコンクリートに叩きつけられれば、簡単だろうな。 毎日。 朝起きては、窓を開けて下を見下ろす。 無意味な日常。 無意味な人生。 幾度となく想像する、自分の最後。 転落死が一番確実だ。 このアパートは、いつでもそれができる。 外では異常気象が続き、ベランダのすぐ傍では、季節外れに咲いたヒメコブシに、無意味に白雪が積もっていた。 それが。 バサリと。 落ちた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加