vixen

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“それ”は、静かに目を醒ます。 「お前は一体、何者?」 Lording… 〈ジジ〉 返答にはやや時間がかかる。 「ジジ。  それはお前の名前か、  お前を造った者の名前か、  どっちだ?」 Lording… 〈私の名はジジ。  私を造った者の名もまたジジ〉 やっぱり。 造った奴は、自分自身の脳をコピーしたんだ。 「お前を造ったジジは、何者?」 Lording… 「おい」 Lording… 「もしもーし」 Lording(考え中)のままフリーズしてしまった。 「壊れたのか」 と、思ったら。 部屋の明かりが急につく。 「は?」 キッチンの電子レンジが周りだし、空調が音を立て始める。 「…ジジ、お前か」 明かりが点滅する。 答えと受け取って良さそうだ。 この部屋の制御を奪ったのだろう。 Lording… 〈12歳。女。ハッカーだよ〉 「12歳で?」 Lording… チカチカと明かりが点滅する。 「勝手に電化製品をいじくるな」 フオンと音がして、空調が止まる。 「ジジはなぜ、お前を造った?」 Lording… また考え始めた。 どうも言語機能を使うコミュニケーションに時間がかかるらしい。 答えを待つ間に、朝食代わりのコーヒーを淹れに行く。 立ち入ると勝手にキッチンの明かりがつき、ケトルに水を入れると勝手に沸かし始める。 「ジジ…」 フオン。 切れたスイッチを入れ直して、お湯を再び沸かす。 キッチンで淹れたてのコーヒーを啜りながら、ルガに話そうと通話を試みた。 でも、ルガの応答はない。 虚しく響く呼び出し音を1分以上聴き続けて、バカらしくなってやめた。 明かりがゆっくり点滅する。 言いたいことがあるのだろう。 ルガの大学のコンピュータを使えば、もう少し早く会話できるだろうが、今のところは借りようもない。 今使える、一番処理の早いハードと言えば。 「やっぱ脳か」 “それ”は明かりが微かに陰って、同意を伝えてくる。 チップを通して脳に直接取り込んで起動すれば、きっともっと早い。 一瞬。 躊躇した。 無音。 暗闇。 ルガが通信を強制切断した時のことを思い出した。 危険だ。 危険? 「何もかも、無意味なんだろ」 何も怖くない。 そう言って。 ダウンロードする。
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