2人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、お母さんはパンプキン伯爵の屋敷からまた仕事に行ってしまった。
私はというと、呪いの解法を調べるためにしばらくパンプキン伯爵の屋敷で暮らすことになった。グーグーとポポはすっかりパンプキン伯爵に心を許していて、よろこんでここでの生活を受け入れてくれた。何より毎日好きな食べ物が食べられるのがうれしいらしい。
「寄宿学校に入学するまでに顔を元に戻したいと思っているけれど、むずかしいかもしれない」
「大丈夫です」
私は笑顔でパンプキン伯爵にうなずいてみせた。
今は屋敷の医務室で、パンプキン伯爵の向かいのイスに座っている。パンプキン伯爵は昨日と違って白衣姿だった。昨日よりもハロウィン感が増している。
「僕もたまに仕事で屋敷を出ることになるけれど、その日には必ずキミのお母さんが休みになるように調整するつもりだ。もうレディがさびしい思いをしなくていいようにね」
「ありがとう」
満面の笑みでうなずくと、パンプキン伯爵の手が顔に伸びた。私は目を閉じて触られるがままにした。ひんやりとするパンプキン伯爵の手は、とても優しく私の顔を触診した。
「うーん。やっぱり呪いが濃いね。一時的な治療をするより、先に解法を見つけ出すのが先だろう」
パンプキン伯爵の言葉をトレースするようにつくえの上の羽ペンが羊皮紙の上を走る。
「でも、きっと治してみせるよ」
「はい! パンプキン伯爵」
私は笑顔でうなずいた。そして自分の顔を触る。
自分じゃ見えないこの傷が、見る人の目には醜く見えるらしい。それも含めて自分だと思おうとしていた。けれど、今に傷が治るかもしれない。そしたら友だちができるかもしれない。でも――。
「パンプキン伯爵!」
「なんだい?」
「私は、これから友だちができても、最初の魔法使いの友だちはパンプキン伯爵だからね! ずっと大事な友だちだからね!」
パンプキン伯爵はおどろいたように息を呑んだ。それからそっと手をのばして私の頭を優しくなでる。
「レディは本当に良い子だ。キミといると、魔法使いも捨てたもんじゃないって思えるよ」
「そうなの?」
私は意味があまり分からず、思わず首を傾げた。パンプキン伯爵は「はっはっは」と笑う。
「さあ、短い昼の間、すこしオータム村を案内しよう」
「はい! パンプキン伯爵」
私はパンプキン伯爵が白衣を脱ぐのを待って手をつないだ。気づけばグーグーとポポも一緒に歩いている。太陽の光にきらめく秋色の村を、四人でゆっくり歩いて楽しんだ。
最初のコメントを投稿しよう!