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月夜の出来事
小さな頃よく遊んだ河川敷。
見上げた夜空には、美しく輝く満月。
……ダメだ、きれいなものを見ていても、全然心が動かない。
うつむいた松川美里は、大きなため息をつく。
「鋼のメンタル」「コールセンターの鉄人」。
みんな私のことをそう呼ぶけれど、違うから。
私だって毎日ほんのひとかけらずつ、メンタル削られてるから。
でも顧客のクレーム対応は、誰かがやらなきゃいけない大事な仕事だと思うから、おいしいもの食べてなんとか切り替えてるだけだし。
だけど、今日みたいに何件も電話口で逆ギレされ続けた日には、ため息しかでないくらい消耗するんだ。
「あーあ……疲れた」
もう一度、美里は夜空を見上げる。
すると、突然、満月がグニャリと歪み、空間が裂け、魔女みたいな格好をした金髪の少女が落ちてきた。
「ちょっとアンタ、そこどいてぇーっ!!」
急にどいてとか言われても。
……ってか、空から女の子が落ちてくるなんて、聞いてない!!
「……ぐふっ」
目の前で起きていることを受け入れきれないうちに、美里は少女の下敷きになっていた。
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