5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ほな、モンスターの言葉がわかる魔法かけたるわ」
キラキラリーン。
エリーが杖をひと振りすると、さっきまでただの唸り声だったモンスターたちの言葉が、同時通訳みたいに聞こえてきた。
『モンスター居住税を軽減しろ!』
『最低賃金を値上げしろ!』
『週休二日制の実現を!』
『王族と話し合う機会をくれ!』
「あ……これ、エリーが正しい。モンスターさんたち、ストライキしてるだけだわ。……ってか、どんな暮らし方させてんのよ?」
「うーんと、モンスターは人間より高い居住税を払って、人里離れた場所で暮らしてるんや。……で、ドラゴンは輸送手段、トロールは労働力、みたいに種族ごとに仕事も決められとって、人間の下で働いとるんやけど、めっちゃやっすい給料で、休みもろくに取れんらしい」
「どんなブラック企業よ!?」
そりゃ、ストライキしたくもなるよ!
……ってか、反乱起こしてないのが不思議なくらいだわ!
「ぶらっくきぎょう?なんやそれ?」
「ごめん。今のは忘れて。……とにかく、モンスターさんたちは、もっといい条件で暮らしたいから、王族と話し合いをさせて、って主張してるだけなの。なんとかできないかな?」
「……ほな、うち、おとんとおかんのとこカチコんだるわ!最悪、魔法つこうてでも、モンスターたちと話し合いさせたる!」
「あのさ、エリー」
「……なに?」
「ご両親がエリーを私たちの世界に送ったのはさ、迫りくる危険から娘だけでも逃がしてあげたい、って親心だと思うの。だから、あまり手荒なことはしないであげて」
「……わかった。せやけど、キレずにおる自信あらへんから、美里も一緒にきて」
「ちょ……なんで私までぇーっ!?」
杖を振り、空間の裂け目を作りだしたエリーは、美里の手を握り、引きずるようにして歩いていく。
最初のコメントを投稿しよう!