月夜の出来事

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「ほな、モンスターの言葉がわかる魔法かけたるわ」 キラキラリーン。 エリーが杖をひと振りすると、さっきまでただの唸り声だったモンスターたちの言葉が、同時通訳みたいに聞こえてきた。 『モンスター居住税を軽減しろ!』 『最低賃金を値上げしろ!』 『週休二日制の実現を!』 『王族と話し合う機会をくれ!』 「あ……これ、エリーが正しい。モンスターさんたち、ストライキしてるだけだわ。……ってか、どんな暮らし方させてんのよ?」 「うーんと、モンスターは人間より高い居住税を払って、人里離れた場所で暮らしてるんや。……で、ドラゴンは輸送手段、トロールは労働力、みたいに種族ごとに仕事も決められとって、人間の下で働いとるんやけど、めっちゃやっすい給料で、休みもろくに取れんらしい」 「どんなブラック企業よ!?」 そりゃ、ストライキしたくもなるよ! ……ってか、反乱起こしてないのが不思議なくらいだわ! 「ぶらっくきぎょう?なんやそれ?」 「ごめん。今のは忘れて。……とにかく、モンスターさんたちは、もっといい条件で暮らしたいから、王族と話し合いをさせて、って主張してるだけなの。なんとかできないかな?」 「……ほな、うち、おとんとおかんのとこカチコんだるわ!最悪、魔法つこうてでも、モンスターたちと話し合いさせたる!」 「あのさ、エリー」 「……なに?」 「ご両親がエリーを私たちの世界に送ったのはさ、迫りくる危険から娘だけでも逃がしてあげたい、って親心だと思うの。だから、あまり手荒なことはしないであげて」 「……わかった。せやけど、キレずにおる自信あらへんから、美里も一緒にきて」 「ちょ……なんで私までぇーっ!?」 杖を振り、空間の裂け目を作りだしたエリーは、美里の手を握り、引きずるようにして歩いていく。
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