月夜の出会いにいいねする

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「誰がみじめだ誰が」  原稿を読み終わった僕は思わず苦言を呈する。  本多さんが顔を上げた。 「どうだった? 宮澤くん的にはあり? なし?」 「なしですね」  僕は断言する。 「センシティブ過ぎますし、コンテストの求める方向性とは大幅に毛色が違う気がします」 「そっか。若い子がそういうなら、そうなのかもなあ」  本多さんはぽりぽりを頭をかき、業務に戻っていった。  僕は改めて、殺人鬼の小説を読み返す。  彼は明らかな悪意を持って、自分に危害を与えようとした相手である。本来ならば、怒ったり、恨んだりして然るべきだ。  しかし、どうにも僕はそうした気分になれなかった。  同じキーホルダーを持つ殺人鬼のことを、僕もまた全くの他人とは思えないのだった。  僕だって人生に自暴自棄になった日がある。僕は自らの頭を撫でた。彼の気持ちはわからないでもない。人を殺そうとは思わないけど、きっとその絶望の一ミリくらいはね。 「……健闘を祈るよ、戦友」  僕は彼の書いた「月夜の遭遇」にいいねした。  顔も名前も知らない殺人鬼へ、心からのエールを込めて。
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