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藤沢美春 〜the after〜
藤沢美春は怯えていた。
田代の妻との話し合いの後、夫は口を開かない。
子供を迎えに行かなきゃ…義両親に息子を預けているはず…早く行かないとまた姑にイヤミ言われちゃう…
家に入ると夫はリビングに置いてあった私のパソコンを初期化しHDDを取り出した。
HDDをキッチンへ持ち込み、まだ朝食の食器が入ったままの洗い桶にぽちゃんと落としリビングを出た。
寝室に入ったらしい。
ガタガタと物音が聞こえている。
リビングに戻って来た夫の手には私のスーツケース。
それを私の目の前に置いた。
私を睨みやっと口を開いた。
「美春、離婚だ。家から出ていけ」
「あっあなた…どうして?」
「どうして?どうしてだと?浮気女と一緒に暮らせるか。お前は俺を丸め込んだつもりだったんだろ?嘘ばっかり吐きやがって。すぐに出ていけ」
「でも、啓太が…」
「俺が引き取る」
「でも…」
「なんだ、また嘘つくのか?いい加減にしろ。どうせお前のことだ。他にも男いるんだろう?行くところには困らないだろう?出ていけっ!」
「啓太を…置いて行けない…」
「なに母親面してやがる、いつもひとりで留守番させてたろ?男と会うために。
男が出来るとお前は仕事だって家を空けるからな。わかりやすかったよ。
啓太は俺の子供だ。親子鑑定して確認したよ。
お前が居なくてもちゃあんと育てる。お前は他の男とまた子供作ればいいだろ?作る気満々だったもんなぁ?」
「…ごめんなさい、魔が差しただけなの。あなたと別れたくない。お願いよ…許して…」
「魔が差した?はっ!笑わせるな、じゃあ結婚してから何度魔が差した?言ってみろよ。
許せだと?面の皮の厚い女だな。俺が何も知らないとでも思ってるのか?もうお前と暮らしたくないんだよ」
「…」
「家の鍵を置いて出ていけ。今後俺と啓太に関わるな。慰謝料は要らん、優しいだろ?離婚届は出しておく。出ていけ」
家の鍵をバックから取り出しテーブルに置いた。
睨みつけている夫に何も言えず、家を出た。
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