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月曜日、出勤すると村瀬さんから異動を告げられた。
「今日から異動ってなぜですか、私は本部長の秘書として動いてるんです。無理です。本部長のスケジュールはタイトなんです。いくらなんでも急すぎます」
「会社の決定です。本部長には僕が付きますので藤沢さんは今日から品質管理課へ異動してください」
有無を言わせぬ圧だ。
なんとか本部長に彼に内容証明が届いた事を伝えたい。口裏を合わせておかなくちゃ…
「…わかりました」
所属ごとにIDを振られるため社用のパソコンやタブレット、スマホも返納する事になる。
(返納前にメッセージ送って、会議室押さえて…)
私物を持ち総務部を出た。
2階のB会議室、ここしか空いてなかった。
広すぎる…隣のA、C会議室と可動パーテーションで区切られただけなので落ち着かない。
彼が入って来た「どうした何かあったのか」
いつも優しい彼がイラついてる?
「コーキの奥さんから内容証明が届いて…慰謝料請求されてるの」
「慰謝料?どうして…」
「チャット見られたのよ。それで不倫だって…でも『ふざけたやりとりだった、肉体関係はない』って押し通すわ」
「それか…妻は俺の出張中に家を出たんだ。離婚…まずいな本気なのか…まいったな…」
「…大丈夫よ、私がいるじゃない…」彼を抱きしめた。
が、彼はすぐに手を振り払い離れた。
「やめてくれ社内だ。異動になったんだろ?別部署の君と今こうしてるのも人に見られるのはまずい。夜…チャットで話せないか?」
「夫にGPSで見張られてて…家に帰ったらスマホもパソコンも取り上げられてるのよ。チャットアプリも消されたの。週末には奥さんと話し合いなの」
「わかった。今後直接会わない方がいい、連絡もこちらからは取らない。迷惑かけてすまない。妻には誤解だと言っておく」
コーキ…冷たくない?気のせい?
隣の会議室から物音がした…?
反対の会議室に人が入って来たのをきっかけに彼は廊下に出た。
美春もまた少し時間を置いて会議室を出た。
少しの辛抱だ。話し合いが終わればまた彼に会う事ができる…
愛しい私の恋人…彼の顔を見ただけで濡れてしまっているのに…早く抱かれたい…さっさとこの件終わらせなきゃ…
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