ふたり のはじまり

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仕事にも慣れた頃、営業部の田代宏紀から猛烈なアプローチを受けた。 彼を成田で見送った日からもう何年も経った。 けどまだ心の中に彼が居る。 彼以外の誰かと恋愛なんて思ってもない。 宏紀の想いに戸惑い、向き合う勇気がない。 断っても断ってもゾンビのように立ち上がる宏紀に、根負けした。 仕事が出来るという触込みの男は心も強いらしい。 私の心の中には小さくはなったが彼がまだ居た。あれだけ好きだったんだから消えるはずもない。 初恋だもの仕方ないわ。と自分に言い聞かせた。 宏紀と付き合いはじめ、誘われるままデートに応じ3回目のデートでキスをした。 その後のデートではキスのあと当然のように身体を求められた。 煮え切らない私はあれこれ理由をつけて回避していた。 クリスマスソングが聞こえる季節を迎え恋人らしく宏紀へのプレゼントを選んだ。 いつ渡そうかと思っていたところホテルのクリスマスディナーに誘われた。 贅沢な食事の後、部屋を取ってあると告げられ覚悟を決めた。 高層階からの目を見張る夜景… 高3の秋、親友にアリバイを頼み彼と旅行に行った。 その日の為にお小遣いを貯め、金曜の夜に夜行バスで大阪へ。 早朝に到着しそのままテーマパークへ。 アトラクションを楽しみ、ショーを見てはしゃぎまわり夜も更けてホテルに入った。ふたり並んで夜景を眺めた。 夜が明けるまで何度も何度も何度も抱きあった…大切な忘れられない思い出。 どうして今思い出しちゃうの。 「菜々美ちゃん?」バスルームの外から宏紀が呼んでいた。「大丈夫?溺れてない?」 「ごめんなさい、もう出ます」パシャっと顔にお湯をかけ、溢れた涙を流した。 お風呂から上がりバスローブに身を包み宏紀のもとへ… ホッとした表情の宏紀に手を引かれベットに誘われる。 いつもより深いキスの後「いい?」と聞かれ首肯した。 バスローブの紐が解かれ宏紀の手が指が菜々美の滑らかな肌を弄ぶ。数年ぶりに男性を受け入れる…緊張した。 熱くなっていく身体とは裏腹に頭の中は冷静で、彼と触れ方が違う…手の暖かさが違う… ほんと、どうして今思い出しちゃうの… 涙が溢れた。 「怖い?」動きを止めた彼に問われ、違うと首を振り否定した。 いよいよ宏紀が私の中に入ってきた時、全身が粟だった。 …彼と…カタチが違う… 初恋が、終わった。涙がこぼれた。
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