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吉日の土曜日に食事をと倉島さんから連絡があった。
指定されたホテルの日本料理店に向かう。予約の名前を告ると個室に通された。
バツイチ同士に親たちは付いて来ない。ふたりきりの見合いがはじまった。
和服姿で現れた香菜子さんは僕より3つ下、素敵な人だ。
僕は離婚の経緯を話した。
今まで自分を律して来られたんですね。お辛い思いもして反省なさったんでしょう?奥様に申し訳ないとちゃんと思ったのでしょう?
彼女と話をして気持ちが楽になった。
少しお付き合いしてみませんか。香菜子さんに提案した。
見合いとはいえ一度会っただけで即結婚とは乱暴な気がする。
以来、食事をしたり、出掛けたり、香菜子さんに俺の人となりを知ってもらった。
ふたりで考え、出した結論はやはり結婚だった。
駿介の養育費の支払いが完了した翌月に彼女と入籍と挙式を行うことにした。
神前での挙式、香菜子さんに真っ白な打掛けがよく似合っていた…菜々美にも着せたかったな。
経営に興味があり父の会社を辞め、本気を見せたくて倉島に婿入りした。彼女と旅館を切り盛りする人生を選んだ。
桜が満開の日、僕は再婚した。
香菜子とは穏やかに暮らしはじめた。
もうこの人しかいない。
バカな僕を伴侶に選んでくれた。
誠実に彼女を愛したい。
実父に経営に向いてると言われてその気になり、旅館運営をしている。営業を積極的に展開した。
旅館は高級と謳われているにも関わらず盛況だった。
フロント裏の事務室で予約受付用のモニターを見ていた。
母から近々2棟予約入れるから都合つけてね、と言われていたので注視していたのだ。
ポンっと音が鳴り新規予約を知らせる。母に渡した宿泊券での予約が入った。
これだな…宿泊者の名を見て驚いた。
菜々美と駿介の名がある。
駿介…結婚式の招待状を送ってくれた時に、菜々美が再婚して駿介も苗字が変わったのを知った。
駿介に子供が居るのか。
あと先考えず、連絡先に書かれた番号へ電話をかけた。
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