閑話〜敢えなくなる人

3/3
前へ
/110ページ
次へ
祥子の実家には久しぶりにお邪魔した。 すぐに和室に通され北枕で眠る祥子に会う。 おばさまが「顔見てあげて?」と微笑む 顔に掛かった白い布を捲る…良かった、穏やかな顔だ。お見舞いに行っても痛みを耐えていて…とても話しかけられなかった。 「祥子、頑張ったね…」涙が溢れた。 ずっとずっと助けてもらってばかりだった。私も祥子を、助けたかった。 お線香を立て手を合わせる。 佳佑はおばさまに葬儀の日程が決まったら、と話をしている。 祥子の訃報を聞き駆けつけた知人たちが次々と弔問に訪れる。おばさまに黙礼し、家に戻った。 「佳佑、ありがとう」 「大丈夫か」 「なぜかしら…顔見たのにね、まだちゃんと受け止められない」 抱き寄せてくれた佳佑にしがみつきその夜は胸を借りてさめざめ泣いた。 友引きが入るので2日後に通夜、その翌日が告別式と連絡を貰った。 佳佑と連れ立ち葬儀、告別式に参列した。 懐かしい友人達と顔を合わせ、悲しみを分かち合う。 祥子のお葬式で会いたくなかったね。 クラス会早く企画しておけば良かった… 皆が悔しさを口にした。 二階堂さんが気丈に応対していた。 目が合うとふっと笑った。 「覚悟はしていたからね」そうは言ったが割り切れるものではないだろう。 幼稚舎から50年余、親友を見送った 「ねぇ、祥子聞いて!」話しかけても、もう彼女から返事はない。 四九日が過ぎ、新盆が過ぎ、一周忌が過ぎ、祥子が居ない事に少しづつ慣れていく。 これでいいのね?祥子 寒さがつのる神無月には切なくて泣きたくなる日がある。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

725人が本棚に入れています
本棚に追加