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「あ……ありがとうございます」
助けられた女の子は僕に向かってゆっくりと礼をした。その所作には品があり、彼女の美しさをより一層引き立たせた。
それにしても、彼女はすごい美少女だ。
ハーフアップにまとめた髪は可愛らしいし、藍色のかんざしもしっかりと似合っている。
「お気になさらないでください。あんな状況だったら誰でも助けると――」
「そんなことはありません!」
うお、びっくりした。いくら美少女とはいえ、ずいと迫られたら萎縮するではないか。
「はわわ……す、すみません」
尻もちをついてしまった僕を見て一気に顔を赤らめ、彼女は着物の袖で顔を隠した。
その仕草に少しキュンとしてしまい、僕の方も恥ずかしさが押し寄せてきたため、急いで立ち上がった。
両手でズボンについた汚れをはらい、赤くなっているであろう顔を隠すために腕時計を見た。
(ヤバッ。バイトまでもう1分もないじゃん。急がないと)
恥ずかしさが一瞬で吹き飛び、冷や汗が流れかかる。
もし女の子絡みでバイトに遅れたら、確実に上司が恋愛脳になって質問しにかかる。
そうなってしまえばジ・エンドだ!
「それじゃあ僕はここで」
「え、は、はい。私の方こそ、とんだご迷惑をおかけ……きゃあっ!?」
お互いに赤みを頬に残しつつ別れようとしたが、いきなり彼女が倒れかかった。まさかの二段構えに対処しきれなかった僕は、彼女に押し倒されるように地面へと激突した。
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