2.転倒する着物少女

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「はわわわわ。す……すみません。鼻緒が切れていたことを失念していまして」  彼女は草履を見てしょんぼりしていた。  僕は痛みと柔らかさにサンドイッチされつつ、ポケットからスマホを取り出した。 「それ、なんとかして直してみるよ」  ハンカチがポケットに入っているのを思い出し、僕はネットで『鼻緒 応急処置 ハンカチ』と検索した。そして検索結果をたよりに、僕はハンカチと5円玉を使って鼻緒を応急処置した。 「重ね重ねありがとうございます」  応急処置をしただけで、彼女はヘドバンするように何度も礼をした。  周りを見渡すと通行人の注目を集めていたことに気づき、居たたまれない気持ちになる。そういったこともあり、僕は彼女をちゃんとした履物店へと案内することにした。 「まだ安心するのは早いよ。次はちゃんとした所で修理するか、新しいものを買ったりしないと」 「え、い、いえ。そこまでなさらずとも、後は私1人でなんとかしますから」 「気にしないでくれ。困っている人がいたら助ける。それは当たり前のことなんだからさ」  申し訳なさそうにしている彼女をよそに、僕はスマホでバイト先に報告をした。そしてなんとかお許しをもらった後、僕はスマホで近くの履物店を検索し、そこまでのルートを割り出した。  今から向かってもバイト先での結末は同じだから、ここは彼女が1人で行動できるまで付き添うこととした。  他の人を幸せになってほしいと願う気持ち。  他の人を幸せにするために力を使うべしという教え。  母から僕へと受け継がれたこれらの意志はどんなことがあろうが、必ず守り続けなければならないのだ。
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