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3.僕に転校生が舞い降りた
翌日。僕はニュー・クリア高校への通学路を歩いていた。
あの後、僕は女の子を履物店――鹿児島市電で30分ほどかかった――へと案内した。草履を修理に出して新しい草履を購入後、僕は谷山停留所まで彼女を送り届けた。
母が迎えにきてもらえることを彼女とともに確認した後、僕は急いでバイト先へと向かった。
――そこからが地獄だった。
待っていたのは、恋愛脳を全開にした吉岡さんだった。
彼女は僕のバイト先の上司で、普段は優しい人だ。僕が元カノと再会して気まずかった時、彼女は親身になって僕の話を聞いてくれた。今の僕がこうして学校に通っていられるのも、彼女の存在が大きいといえよう。
唯一つ、吉岡さんの欠点を述べるとすれば、それは恋愛絡みになるとすごくめんどくさくなるという点だ。
まず、彼女は鼻がきく。たとえ女の子に1秒でも触れていようが、彼女はその触れた箇所を瞬時にかぎ分けることができる。
次に、彼女は女の子と何が起こったかを精密に予知してくる。正確に言えば、恋愛探知機は手をつないだり、抱きしめたり、果てにはキスしたかについて言い当ててくるのだ。
最後に、彼女は5W1Hを中心に細かく質問してくる。バイトの先輩から聞いた話によると、逃げようものなら地の果てでも追って詳細を聞き出そうとするとのことだ。
だからこそ、彼女にごまかしは無意味!
観念して真実を話す以外に助かる道はないのだ。
予期せぬ事態だったとはいえ、バイトが始まる10秒前に連絡を入れ、かつ1時間も遅れてしまったのだ。断るわけにもいかず、僕は恋愛探知機にこってりと質問された。
質問にちゃんと答えたことで減給の話はなくなったものの、あまりの恥ずかしさに僕の心は未だボロボロの状態だ。
こういう時に空音美がいてくれれば、すぐに全快するのだが――。
そう悲観している内に、僕はニュー・クリア高校へと到着した。
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