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彼女との出会いは2年前の5月3日の夜、雨が激しく降り注いでいた公園で見かけたのが始まりだった。
あの時に見た彼女の姿は今でも覚えている。濡れた体を抱きしめることもなくただ儚げに虚空を見つめ、声を押さえて泣いているあの姿ほど、強烈なものはなかったからだ。
そんな彼女の姿を僕は放っておくことはできず、彼女がこれ以上雨で濡れないように傘を差しかざし、持っていたタオルを彼女へと渡した。最初は充血した目をチラリと見せて僕のことを警戒していたが、10分経った頃には公園で突っ立っていた理由を話してくれた。
その理由は年頃の中学生によくありがちな親子喧嘩だった。
勉強をするように厳しく言う父に耐えきれなくなって家を飛び出した。そこまではよかったが、気まずくなって我に返ってしまい、涙がすぐにあふれてしまった。そんな時に僕が現れたということだった。
そんな彼女を僕はなんとか宥めた。彼女の悲しさを全て受け止め、落ち着くまで胸を貸して、存分に泣かせてあげた。家に帰りづらい彼女を僕が届け、彼女の母にしきりに感謝されたのは言うまでもない。
この日以来、僕と彼女は何度も公園で落ち合うようになり、それをきっかけに付き合い始めた。彼女には少し依存的な所があって、他の女の子と仲良くしていると嫉妬する所もあった。それでも彼女との日々は楽しさに満ち溢れていた。
けれど、そんな夢の日々は突然、終わりを告げることとなる。
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