1.やっぱり今回も駄目だったよ

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 悪夢の再来、あるいはフラグ回収と言うべきか。なんと僕と同じ高校に、それも同じクラスに後藤空音美(元カノ)の姿があった――それも、僕とは違ってイケメンな彼氏を連れて。  僕はこの瞬間、自分のことが憐れで惨めな存在のように思えた。失恋から立ち直っただけの僕と違い、彼女は失恋を乗り越えるどころか、新しい恋を始めていたからだ。  そんな彼女の姿を見せつけられた僕は瞬く間に自信を失った。  それだけでなく、空音美は今カレとともに、左眼の眼帯のことで(いじ)ってくるクラスメイトから僕のことを擁護してくれる。そんな彼女の勇猛さを見せつけ、僕は自分のことがより恥ずかしく感じた。  かつて付き合っていた頃には見たことのなかった元カノの姿は眩しく見えた。けれどその一方で、塞がっていた筈の穴は再び開き、二度と味わいたくもない痛みがまた心を駆け巡った。  こうして、高校のスタートダッシュは最悪なものへとなり、僕は去年の夏へと戻ってしまった。
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