2.転倒する着物少女

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2.転倒する着物少女

 重い足取りでなんとか交差点へとやって来た。夕方の人や車の往来は激しく、帰宅やら出先からの戻りやらで慌ただしい。僕のいた鹿屋市も驚くほど、活気があふれている。  だが、僕の気分はそれ以上に沈んでいた。公園から離れた今でも、空音美のことが頭から離れていなかったからだ。  胃にプレッシャーがかかり、胸も何度か苦しくなって、呼吸のペースもあがっていく。 「駄目だな、僕」  気づけば赤信号が視界から外れ、灰色の地面が映り込む。そんな自身の有様に苦笑いすら込み上げた。  本当は気づいている――失恋を引きずり込んだって何もないことを。  本当は分かっている――失恋から立ち直って前に進まなければならないことを。  車が横から来なくなり、周りに立ち止まっていたサラリーマンが歩みを始めた。信号を見るまでもなく、青信号へと変わっていることが分かる。  足枷をはめ込まれた足をなんとか引きずり、サラリーマンを追うように横断歩道を渡り始めるため、顔を見上げた。そして二度と地面に吸い込まれることもなく、僕の視界はある女の子に固定された。
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