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ゴミ捨て場にゴミ袋を置くと、はぁ、と膝から崩れ落ちてしまう。
どうしよう……教室に戻ったら、五十嵐くんいるよね……?
私、絶対、顔赤くなってるよね……? 恥ずかしい。なんか、変な勘違いしちゃってるみたいで。でも、だって、あんなこと言われたら普通――
「えぇっ! 五十嵐のこと好きなの?」
ドッキン、と心臓が跳ねてしまう。
声のする方を見上げると、外階段で女の子数人が喋り合っていた。……確か、あれは隣のクラスの子達……。 五十嵐くんって、あの五十嵐くんだよね……?
サッ、と背中を壁に当て、耳を澄ましてみる。
「うん。だって、カッコイイし」
うわぁ~。五十嵐くんって、やっぱりモテるんだ!
確かに、まぁ……普通に、カッコイイ、よね。わ、私は思ったことないけどね!
でも……さっきも、私のこと心配してわざわざ戻ってきてくれたり、最近も、授業終わったあとの黒板消しを手伝ってくれたり……。
優しいな、素敵だな、って思って。いつの間にか、五十嵐くんのこと、目で追うようになってた。
だから、私だって……。
ハッ、と思わず我に返る。
何してるんだ、私……!! こんな、盗み見聞きは良くないっ。
周りをつい不要に見まわしてから、一歩踏み出した。その時だった。
「五十嵐ってさぁ、彼女いるじゃん」
思わぬ情報に、ピタリと足が止まる。
え……?
彼、女……?
「そうなの~。だから、どうしようかなって今めっちゃ悩んでて~」
――その後の会話は、何も耳に入ってこなかった。
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