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ポロリ。
廊下を歩きながら、気づけば涙が頬を伝っていた。
あれ……私、もしかして、期待してた?
五十嵐くんが、ちょっとでも私に気があるんじゃないかって。
でも、あんな……あんなことされたら!!ちょっと思っちゃっても仕方ないよね!?
涙を拭きながら、今度は何だか腹立たしくなってきて、ズンズンと階段を上っていく。
五十嵐くんに、説教してやる!
彼女いるのに、私とメッセージのやり取りしたり、変なこともう言わないで、って!
一言言ってやらないと気が済まないんだから! あのチャラ男め!!
ガラッ、と勢いよく教室の扉を開けると、五十嵐くんは私の席に座っていた。
ん……? 私の席……?
バッ、と五十嵐くんはすぐに立ち上がり、赤面して頭を掻き始める。
「あ、あぁ~。ちょっと、掃除終わって休んでたわ」
床を見ると、埃一つなく、机も椅子も綺麗に整列されていた。
……すごい。この、短時間で……?
「あ、ありがとう。五十嵐くん、掃除上手だね」
五十嵐くんは、とろけるように破顔する。
「まぁ、ちょっと桃原と話したかったし」
また、そういうこと言う。
ぎゅうっ、と両拳を握りしめる。
「桃原……?」
涙が出てくるのを、必死に堪えた。
ずるいよ、五十嵐くん。
好きになったら、止められないって。
教えないでよ。
「……私のこと、もうからかわないで」
「は? ……からかう?」
「だっ、だから! そういう、話したいとか……五十嵐くんは、軽いノリで言ってるんだろうけど、こっちからしたら……」
「ノリ? なにそれ。俺は、心の底から桃原と話したいんだけど」
あぁ、もう。顔熱くなるな、私。
こんなにチョロい女だから、舐められるんだ……!!
「か、彼女いるのに……っ!! そんなこと言っちゃダメなんだよ!?」
言うと、五十嵐くんは時が止まったように固まった。
けど、数秒後、なぜか口角が上がっていく。
「……。あぁ、そういうことね」
五十嵐くんは、手の甲で口を押さえ、何やらニヤニヤと笑っている。
それを見て、もう怒りが頂点に達した。
「私、チャラい人大っ嫌いだから!! じゃあ!!」
「待てって!! 桃原!!」
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