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「……今まで、アルトゥル様とのお目通りは何度もありました。ですが、二人きりになれたことはほとんどありません。その時も、打ち解けた会話とはいかなくて」
「どんな様子でした?」
「同じソファに座っていても、アルトゥル様は黙って、じっと私の様子を観察しているのです。あの鋭い目で。あのように男振りの良い方ですから、決して不快ではないのですが、なんだかどぎまぎしてしまって」
「それで、どうされますか。あなたは」
低い声でおじさまは、私に質問されます。
「なんとか私は、気の利いた話題を出そうと試みるのですが、なんだか空回りしてしまって。それで、いつも自分から謝ることになるのです」
「何と言って謝るんです?」
「『あ、すみませんでした……。つまらないですよね、こんな小娘のお話は。アルトゥル様のような大人の方には、特に』と」
「アルトゥル様は、何とお答えになりますか」
「『つまらないなどと、そのようなことは。それより、あなたこそ。私のような年寄りに付き合わせてしまって申し訳ないと、そう思っているのです』と。ですから私は、『そんな、年寄りなんて! アルトゥル様は麗しく、また賢く、強いお方です! そんな風に仰ることなんて、何一つございません!』と、慌てて取りなすのです。でもその後は、会話がぎくしゃくしてしまって」
「……ふっ」
おじさまは、そこで吹き出します。堪えきれない、というご様子でした。それから、声を上げてお笑いになります。それは、今まで聞いたことがなかったような、おじさまの朗らかな笑い声でした。
「……すみません。いや、しかし実に。よく似ていらっしゃる」
「どういうことです?」
「お母様の、お若い頃に。それから、アルトゥル様も、お父様、ランデフェルト公爵殿に。他人の空似とは思えないほど」
そう言って、それから目を細めておじさまは、私の方を見ています。それから、再び口を開くのでした。
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