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豊の言葉は珠美にとっては夢の中のようなものだった。
自分は今夢を見ているのかもしれない。
目が覚めてしまえばなにもかもが終わるかもしれない。
そんな不安まで胸によぎった。
でもこれは現実に起こっていることで、すべてがリアルだった。
相手と自分の呼吸音とか、ちょっとした風の動きがこれは現実だと告げている。
私も……。
そう口が動きかけたとき、ふと珠美は動きを止めた。
告白は嬉しいけれど、自分は豊のことが好きなんだろうか?
今の勢いでOKしてしまいそうになったけれど、実際はよくわからない。
だって今まで豊のことを意識したことなんて1度もなかったんだから。
珠美は返事に困って黙り込んでしまった。
褒められることも告白されることも嬉しくて、自分の気持を置いてけぼりにしてしまった。
「ダメかな?」
長く続く沈黙に耐えかねた様子で豊が聞く。
「ダメというか……」
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