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豊から香水の匂いがしてきたことはないし、香水に興味があるようにも見えない。
なによりも、豊が今見ている香水はブランド品で、相当高級品なのだ。
中学生が購入できるような商品じゃない。
なにをしてるんだろう?
そう思って首をかしげた時、店員の目がそれた瞬間を見計らったように豊の手が展示されている香水に伸びた。
そして躊躇なくカバンの中にそれを入れる。
一瞬、奈穂はなにが起こっているのかわからなかった。
豊が万引するなんて少しも考えていなかったからだ。
豊はしばらくの間にその場に留まって商品を見る素振りを見せてから、そのまま店を出ていってしまった。
レジは通さなかった……。
☆☆☆
帰り道、自転車をこぎながらも奈穂の心臓はドキドキしていた。
クラスメートが万引する瞬間を目撃してしまい、動揺もしていた。
豊はどうしてあんなものを盗んだんだろう。
本当に欲しくて盗んだのかな?
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