最後の1人

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奈穂には豊がどうしても欲しくて盗んだようには見えなかった。 それに、豊の家は確かとても裕福だったはずだ。 考えれば考えるほどに奈穂の心は沈んでいく。 豊の万引を目撃してしまってからしばらく店内に残っていた奈穂だが、結局豊がお店に戻ってくることはなかった。 そして外に出たときにはもう豊はいなかったのだ。 目撃したことを誰かに相談した方がいいんだろうか……。 そう思っている間に家についた。 「ただいまぁ」 暗い気持ちでキッチンへ向かう。 「あら、そんな顔してどうしたの? 試食がなかった?」 夕飯を作っている最中の母親がすぐに奈穂の変化に気がついた。 出かけるときには機嫌が良さそうだったのに、今はとても暗い顔をしているからだ。 「ううん、あったよ」 答えながらエコバッグから牛乳を取り出して冷蔵庫へしまう。 「じゃあなにかあった?」 「あのねお母さん……」
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