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そう言われればそのとおりだ。
みんな普段持ち歩いているものをなにも持っていなかった。
ハンカチすらなかったのだから、4人のうちの誰かが持ち込んだ可能性は少ない。
「気味が悪いね」
珠美はそう呟くとすぐにナイフを教卓の上に戻した。
普段持っているはずのものがなくて、ないはずのものがある。
これこそ夢の中なんじゃないかと思えてくる。
奈穂はそっと自分の頬をつねってみたけれど、それにはちゃんとした痛みがあって顔をしかめた。
どうやら夢じゃないみたいだ。
時計の針は3時30分を差している。
夜明けまでまだまだ時間がありそうだ。
外に連絡をとることはできないし、自力で脱出することもできそうにない。
後は朝になって誰かが来てくれるのを待つ以外に手はなかった。
「どうなってんだよ意味わかんねぇ」
一浩が悪態つきながら床に座り込み、壁を背もたれにして目を閉じた。
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