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「なんで……」
千秋が最後まで言う前に豊は鍵を開けて玄関に入っていた。
そのままバンッとわざと大きな音を立ててドアを閉め、鍵も閉めた。
そこまでしてようやく千秋は静かになった。
それでも豊はすぐには部屋に向かわなかった。
玄関ドアに耳をピッタリをくっつけて千秋の様子を伺う。
千秋はしばらくその場にいたようだけれど、数分後ようやく諦めて帰っていく足音が聞こえてきたのだった。
☆☆☆
その翌日から豊は千秋のことが気になって仕方がなかった。
万引しているところを目撃されたのだから、当然だった。
「千秋、昨日さぁ」
「千秋ってさぁ」
そんな声が教室で聞こえてくるたびにビクリと体を震わせて耳をそばだててしまう。
いつ千秋が万引についてクラスメートに話すかもしれないと思うと、気が気ではなかった。
だけど学校内で千秋が豊になにかを言ってくることはなかった。
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