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廊下で偶然すれ違うときに視線がぶつかると、なにかいいたそうな表情になる。
けれどなにも言ってくることはなかった。
普段どおりの生活を送っている千秋を見ていると、豊はだんだん怖くなってきた。
千秋はいつか万引のことを誰かにバラすんじゃないか。
先生、友だち、両親。
もしかしたらもっと大変な人たちにバラされてしまうかもしれない。
そう考えると豊の中で自分の人生が破滅へ向かっていく様子がいとも簡単に想像できた。
そしてだんだん、千秋のことが恐ろしく見え初めてしまったんだ。
だから……。
「千秋は成績がいいけど、カンニングしてるらしい。もうずっと前から」
同じクラスの一浩へそう伝えたんだ。
豊は一浩がいくら勉強してもいい点数が取れず、それを気にしていることを知っていた。
更にクラス内でも乱暴者で通っている一浩が、勉強ができる千秋を心の中で尊敬していることも知っていた。
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