珠美の告白

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珠美の告白

すべての話を聞こ終えた後、奈穂は震える両手で自分の顔を覆った。 まさかそんなことがあったなんて、自分はなにも知らずにのうのうと過ごしてきたのだと思うと、過去の自分を殴りたい気分だった。 もしも過去の自分がなにか少しでも知っていれば、そして行動していれば違った未来が来たかも知れないのに。 「一浩のイジメを誘発させたんだね」 奈穂は青い顔で横になっている豊へ向けて聞いた。 豊は小さく頷く。 首の傷はたいしたことなさそうに見えるけれど、苦しそうだ。 「どうしてちそんなことしたの?」 「千秋のことが怖くて……イジメることで黙らせようと思った」 最低だ。 なにもかもが最低だった。 自分が万引をして、それをバラされないようにするためにイジメを誘発させた。 「それって最低だよ」 奈穂の声が震える。
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