珠美の告白

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悲しみとか、憎しみとか、いろいろな感情が混ざりああって今の気持ちを表すことも難しい。 「俺だって……今までずっと真面目にやってきた。それが崩れるのが……嫌だったんだ」 豊は切れ切れの声で呟く。 そう、豊は真面目な生徒だった。 生活態度も成績も悪くない。 友だちだってたくさんいる。 「じゃあどうして万引なんてしたの?」 奈穂が質問したとき、豊の体がパッと消えるように灰になった。 そこにいたはずの豊の姿は消えて、珠美のスカートのかけらだけが取り残される。 「外に出たんだ!」 珠美が叫んだのとほぼ同時にチョークがひとりでに動き出した。 『望月豊は外へ出ました』 この文字が本当かどうかわからない。 奈穂は視線を黒板の上にある時計へやった。 時間が進んでいる。 あれほどのんびりとした動きだった針が、今は4時を過ぎたところにある。
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