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カギも鍵穴もないから簡単に開閉できるはずなのに、なぜか手こずっているのがわかった。
「なんだこの窓、カギは開けたのに開かねぇ!」
一浩が叫び声に似た声を上げる。
さっきから両手をつかって懸命に窓を開けようとしているため、顔は真っ赤に染まっていた。
一浩の二の腕は筋肉で持ち上がっているし、これが嘘だとは思えなかった。
「窓もドアも開かないってこと?」
珠美が青ざめた顔で聞いてくる。
奈穂は答えずにまたドアと向き直った。
両手を使い、力を込めて開こうとする。
けれどドアはびくともしなかった。
「こっちもダメだ!」
振り向くと豊がベランダ側の窓が開かないか確認しているところだった。
でも、そこも開かないらしい。
だんだん焦りが湧いてきて、背中に冷たい汗が流れ落ちていく。
「閉じ込められたってこと?」
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