20人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言われてふたり同時に振り向いた。
豊が少し顔を赤らめて立っているのを見て、奈穂は感づくことがあった。
クラスメートの豊が珠美に声をかけるときには必ず頬が赤くなることに気がついていたのだ。
きっと、豊は珠美のことが好きだ。
「なに?」
足を止めて珠美が首をかしげる。
「あの、えっと……」
豊は途端にしどろもどろになって口ごもる。
そして奈穂へ視線を向けた。
奈穂は軽くウインクをして見せる。
豊は今日勇気を出そうとしているのだということがわかったからだ。
「珠美、映画の約束はメッセージで送ってくれる? 私先に帰るね」
「え?」
まだ事態を把握していない珠美は帰っていく奈穂と豊を交互に見つめる。
けれど結局奈穂を追いかけることはしなかった。
目の前に立つ豊がとても真剣な表情をしていたから、ちゃんと話を聞かなきゃいけないと思ったからだ。
「少し話せる?」
最初のコメントを投稿しよう!