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「うん」
珠美は頷いて豊について行ったのだった。
☆☆☆
グラウンドや部室棟では掛け声や楽器の音が聞こえてきている。
そんな中、豊と珠美のふたりは校舎のひと気のない渡り廊下へ来ていた。
自分たち以外に誰も居ない空間に珠美はなんとなく落ち着かない気持ちになる。
こうして男子と一緒にいることなんてほとんど経験がない。
奈穂も一緒にいてくれれば心強かったのに。
そう思って手悪さを始めたときだった。
「俺、豊だけど」
「うん、わかってる」
珠美は頷く。
どうしてここで自己紹介をするのかよくわからなかった。
豊は「知ってるよな」と、頭をかいた。
「もちろん。だって同じクラスだし」
入学したばかりというわけでもないし、自己紹介をする必要なんてない。
豊はこのとききっと緊張していたんだと思う。
「そ、そうだよな。変なこと言ってごめん」
「いいけど、私になにか用事?」
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