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少し時間がほしい。
そう思ったときだった。
ふと珠美の脳裏に豊を試してみたいと思う感情が芽生えた。
自分を好きだと言っているこの人は、自分のためにどこまでしてくれるだろう。
それは珠美が好きで見ていた映画の内容でもあった。
好きな女性が誘拐されて、果敢にも助け出す男性。
内容はミステリー寄りだったけれど今ならそれが再現できるんじゃないかと考えたのだ。
だけど都合よく自分がピンチに陥ることは難しい。
だから……。
「私、どうしても欲しいものがあるの」
探るように豊へそう言ったのだ。
「欲しい物?」
豊は首を傾げつつも、珠美の言葉に耳を傾けている。
「そう、この香水なんだけど」
スマホ画面で高級な香水の写真を表示させて、豊へ見せた。
本当に欲しいと思っているものではなくて、単純に瓶が可愛くて写真に収めただけのものだった。
これを待受にしていたのだ。
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