目覚め

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誰にともなく問うと、血管を浮き上がらせた一浩が椅子を持って廊下側の窓へ向かった。 「なにするの?」 奈穂が思わず声をかける。 一浩は答えずに勢いよく椅子を窓に打ち付けたのだ。 がんっ! 鋭い音が響き、珠美がビクリと身を縮める。 しかし窓は破られていない。 「くそっ。結構力入れたのにな」 一浩はぶつぶと文句を口にしながらまた椅子を窓に叩きつける。 本来ならすでに割れていてもおかしくない。 でも、窓はやはりびくともしなかった。 「もしかして強化ガラスになってるんじゃないか?」 そう言ったのは豊だった。 しかし、一浩はすぐにそれを否定した。 「いや違う。外に面した窓ならともかく、廊下側に面した窓だぞ? 何度も割れたことだってあるはずだ」 確かに、入学してから窓が割れたことが1度だけあった気がする。
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