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豊が言っていた通り中学生に購入できるような品物じゃない。
豊が試行錯誤している間に自分は答えを出すつもりだった。
それがまさか……。
数日後、珠美はまた豊に呼び出されて渡り廊下へ来ていた。
今日もそこは相変わらずひと気がない。
「これ、約束の香水」
そう言って差し出された香水の箱に珠美は固まってしまった。
受け取ることができずに、ジッと見つめる。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない」
我に返って笑顔を浮かべて香水を手に取る。
それはラッピングもされていなければ、お店の袋にも入っていなかった。
だからこのときにおかしいと気がつくべきだったんだ。
だけど珠美は豊が自分のためにここまでしてくれたことに驚いて、気がつくことができなかった。
冷静になればおかしなところなんて沢山あったのに。
「ありがとう。私のために頑張ってくれたんだね」
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