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なにをどう頑張ったのか、なんて考えなかった。
ただ豊の家は裕福だから両親に頼んだのかなとか、その程度のことしか思わなかった。
まさか香水を盗んでいたなんて。
それがキッカケになって千秋がイジメられていたなんて……珠美は知らなかった。
☆☆☆
すべてを吐き出した珠美は泣きじゃくっていた。
手の甲で何度涙をぬぐってもこぼれ落ちてくるそれは、机の上に水たまりを作っていた。
「まさか万引してきたなんて思わなかった。私はなにも知らなかったの!」
それは叫び声に近くて、どこかにいる千秋へ向けられている言葉だった。
奈穂は沈痛な表情でそれを見ている。
珠美はきっと悪気はなかったんだと思う。
けれど千秋から白羽の矢が立てられて、ここへ来てしまった。
「……どうして豊の気持ちを確かめるようなことしたの?」
「だ、だって……」
珠美は何度もしゃくりあげる。
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