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その視界は涙で歪みっぱなしで、奈穂の顔もよく見えていなかった。
「私のこと好きって言ってもらえて、嬉しくて……」
それで、ちょっと試してみたくなった。
どれくらい好きなのか。
その気持が本物なのか。
今思えば滑稽だけれど、異性に告白された経験がなかった珠美には大きな出来事だったんだ。
「だからってそんな!」
「奈穂にはわからないよ!」
珠美の声に奈穂の声がかき消された。
珠美が奈穂を睨みつける。
「美人でスタイルもよくて、男子からも女子からも人気があって。そんな奈穂にわかるわけがない!」
「そんな……」
珠美の勢いに圧倒されて後ずさりをする。
珠美がそんな風に思っていたなんてショックだった。
珠美とはいい友達になれたと思っていたから。
だけど珠美の中ではそんな劣等感が育っていたんだろうか。
そう思うと胸が痛む。
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