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『私はちゃんと聞いてる。だからすべてを話して』
今思えば少し丸っこくて癖のあるこの文字は何度か見たことのあるものだった。
千秋の文字。
奈穂はここまで来てようやくそのことに気がついた。
でも、それに気がついたところで今更どうこうなるものじゃなかった。
奈穂はゆっくりと立ち上がると、ナイフを握りしめて自分の席へ向かった。
どうせここで自殺をすることになる。
それなら最初からナイフを握りしめておけばいい。
ナイフに追いかけられるなんて無駄な恐怖を味わう必要なんてない。
そして椅子に座り、教卓へ視線を向けた。
まるでそこに千秋がいるように目を細め、そして「ごめんね」と、小さな声で呟いた。
☆☆☆
その日、1度家に帰った奈穂はキッチンに立っている母親から牛乳を買ってくるように言われて再び外へ出ていた。
右手にはエコバックと小銭の入った財布。
向かう先は大きなデパートだった。
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